夏草の賊 [歴史/チャンバラ(日本)]

タイトル    夏草の賊
作者     司馬遼太郎


(あらすじとデータ)

司馬遼太郎が「情熱」をテーマに書いたというのが、
土佐の長曾我部元親。
戦国時代に四国を統べ、後に秀吉に降った男である。

その元親が嫁にもらったのが、
明智光秀の部下・斎藤内蔵助の妹。
すなわち、のちの春日局の叔母である。

内面は意外とグズグズしている元親と、
裏表のない冒険家である嫁の戦国物語。


(私はこう読んだ)

なんとなく猛々しいイメージが先行していた長曾我部ですが、
そうだよなあ、男らしい男のグズグズしたのって
こんなだよなあ…と
思わせる人物の切り取りかたで。
さすが。
司馬式人物造形は相変わらず可愛らしい。
信長や秀吉のような派手さはないけれど、
個性的で面白い武将だと思いました。

嫁がまた愉快なの。
粗忽で、ちょっとしたおバカさんなんだけど、
たいへん共感しました。
こういう物語を読むと、
人間、多少バカのほうが幸せで正しいんじゃないか
って気になります。

前半、野放図に野心を抱いていた元親が、
秀吉に屈したあと、息子に死なれたあとと、
徐々に萎んでいくのは切ないです。
田舎にあって、きらぼしなごとき武将であった元親の、
諦めの形が、また印象的で、ドラマチックな一冊でした。
この晩年を負け犬と呼ぶのは簡単だけど、
そうはしなかった大作家の答えに、
日本の美意識を読みました。



夏草の賦 [新装版] 上 (文春文庫)

夏草の賦 [新装版] 上 (文春文庫)

  • 作者: 司馬 遼太郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2005/09/02
  • メディア: 文庫



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