風と共に去りぬ [歴史(海外)]

タイトル    風と共に去りぬ
作者     マーガレット・ミッチェル


(あらすじとデータ)

主人公スカーレットは綺麗なお洋服と食べることが大好きな
大農園のお嬢さま。
ワガママだけど可愛らしい彼女は天下無敵の16歳だった。

モテモテの彼女が唯一手に入れられなかった男、
貴公子アシュレイ。
彼はスカーレットに惹かれながらも、従姉妹メラニーと結婚する。

フラれたスカーレットが、その腹いせに結婚したのはメラニーの兄。
だが、折りしも勃発した南北戦争で、彼は呆気なく戦死してしまう。

戦争は人々からあらゆる物を奪い去る。
しかし、スカーレットは鼻息も荒く、
「もう二度と餓えない」をキャッチコピーに、孤軍奮闘。
反則連続の捨て身の手法で、
家族を養い、商売を切り盛りし、戦争と貧困を乗り越えてゆくのだった。

けれど彼女はまだ気づいていなかった。
時代の運命と闘っていたのは彼女だけではなかったことも。
闘う彼女をずっと支えてくれた人たちがいたことも。


(私はこう読んだ)

劇的に面白かったです。
元祖ツンデレ嬢スカーレット・オハラが、ダンディーな男に愛される、
ワガママお嬢さまのロマンス小説・・・
だと思っていたら、結構ガッツリ系の戦争物だったので、びっくりしました。

美しい故郷と、そこに息づく価値観を、
戦争によって破壊された人々がどうやって復興を遂げたのか、というテーマの物語で、
新しく作った価値は人それぞれだったね、という視線が
実に歴史小説らしくて心地よかったです。

これまで今ひとつピンとこなかった南北戦争ですが、
思えば北軍側の理屈しか読んでいなかったなあ、と
気づいた途端、
南軍側の、しかも女性目線で語る本書によって
腑に落ちた事もいろいろ。
夜な夜な変な服着て集まる怪しい人達ク・クラックス・クランも
歴史の必然として発生したことを納得できたし、
アメリカ二党政治の原点もボンヤリとだけど分かったし。

もちろん、あくまで南軍側。しかも白人側の意見だけど、
こういうのは良し悪しじゃなくて、
歴史上存在した、ひとつの世界観なので、
読めて良かったな、と思います。

それにしても。
この主人公はスゴイ。
ちょっと逆説っぽいけど、
伝説的な町の嫌われ者のお婆ちゃんの、
どうしてこうなっちゃったのかを紐解くお話として書かれているようで、
憐れだけど、同情できない、
ヤな奴だけど、でも共感はしちゃう、
不思議にリアルなキャラクターで、うっかり感情移入しちゃいました。
さすがは古典にしてベストセラー。
名作の名に恥じない熱っぽさは、やはり侮れません。

特にアトランタ陥落前後から戦争が終わるあたりまでは
本当に面白く、夢中になって読みました。
その後は、
何事も限度が必要だなあ、と我が身を振り返らせてくれる
凄まじい展開。

特に、ラストシーンには本気で恐怖を覚えました。
根拠のない希望を主人公に語らせておきながら、
最後の最後に残った彼女を受け入れてくれている人たちを
スッパリ捨てた瞬間で終わってて。
これがおそらく、
この人の寂しい老後の始まりなんだとしか思えない、
凄まじいラストシーンだと読みました。
絶対にヨリが戻るわけがない男を追いかけて、
結局ボロボロになって、誰からも嫌われて、
ただただ死ぬのを待ちながら、
金勘定するダケの人生が決まった瞬間でしょ、これ?
少なくとも私はそういう風に読みました。
荒涼とした気分になって、怖くて、
その日は怖い夢まで見ちゃったもの。

でも、こんなことする人、私だって付き合えないもんなあ。
多少とも優しくなれるのは「自分の持ち物」である黒人に対してだけで、
それだって「メンテナンス」なんであって、
「人間」を自覚したマミー(忠実な黒人おっかさん)にさえ見捨てられてしまって、
でも、スカーレットは平気なんだから、怖い。
どうしたらこれほど人間に無関心になれるのか、
これだけ自分勝手だと自業自得なので、しょうがないです。


それにしても、
思ったよりも小説が面白かったので、
生まれてはじめて、映画も見てみようと思いましたよ。
レット・バトラーはちょっと女の子みたいだけど、
ちゃんとエロいおじ様なので、
ロマンス部分を拡張してあるだろう映画のほうも
期待できそうだなあ、なんて。
バトラーにコルセット締められるシーンとか、あるのかなあ(ドキドキ←大好き)

ちなみに私は妹と結婚する義足の男が
ミステリアスで有能でステキだなあ、と思いました。
でも、基本的に女の人がカッコいい話なんだよなあ。


いまや絶版の河出書房世界名作全集で読みました。
記念すべき第一回・二回配本!



風と共に去りぬ (1) (新潮文庫)

風と共に去りぬ (1) (新潮文庫)

  • 作者: マーガレット・ミッチェル
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1977/06
  • メディア: 文庫



なるほど!世間に聞く「風とともに去りぬ」観はコレだったのか!
目からウロコでした。
バトラーさん、カコヨスー!
これは、お嬢さんがたの魂抜き取るわー

そして、スカーレットは子供を虐待してないし、
奴隷いじめも囚人いじめもそんなにしてないし、
これなら悪人っていうよりは、
単に我儘で気の強いひとって感じで、
味方になりたくなるのも分かります。
だいたい、喪服でダンスがあんなに笑えるシーンになっているとは・・・
これは嫌いになれない(笑)
っていうか、このスカーレットなら
ラストから先に、ちょっと心をいれかえれば
なんとかなっちゃうかもしれない印象もあるのかも。

スカーレットの悪人ぶりが柔らかくなっているぶん、
メラニーのカッコよさはパワーダウンしていて、
映画だけ見てファンになっている層にアンチ・メラニーが多いのも
さもありなん、という感じ。

あと、戦争・戦後のぐしゃぐしゃしたあたり、
特にお父さんが亡くなるくだりを端折ったせいで、
スカーレットのトラウマが分かりにくいのは残念。
映画じゃ泣けないなあ、私は。

でも、
とりあえず、私としてはカーテンドレスが見れただけでも
映画を見た価値ありました。
ジャック・スパロウか?くらいのナンジャコリャ加減のお衣装で、
正直忘れられません。
カーテンドレス対決は「サウンドオブミュージック」は負けだと思いました。


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