新世界より [SF]

タイトル    新世界より
作者     貴志 祐介


(あらすじとデータ)

その田舎町には結界が張られていた。
外界の化け物から子供達を守るためだ。
穏やかな町。
この町の子供達はみな念動力に目覚める。
落ちこぼれた者は処分される。

ここは人々が念動力を手にした1000年後の世界。
住民は管理され、知識は規制されている。

キャンプに出かけた子供達は小型図書館端末ロボットに
接触し、禁断の知識を得てしまう。
それを知った大人に処分されようとした、そのとき。
子供達はバケネズミの抗争に巻き込まれてしまい・・・


2008年、第29回日本SF大賞受賞作品。


(私はこう読んだ)

とにかく想像珍獣の密度の濃さに満足しました。
ネーミングセンスに若干の疑問を感じたものの、
変な動物がいっぱい出てきて、
もう、それだけでも楽しかったです。

設定の細かいところに気が配ってあって、
全体に、よく作ってある作品だなあ、という印象です。
そのために、かえって組織論を含む人間ドラマが
薄っぺらなところが、悪目立ちしちゃったけれど、
それでも、最後まで飽きずに読ませられるんだから
凄いです。
もっとも、
そのへんは、せめて17歳以前に読んでたら、
もっと面白く読めたのかなあ、という感じもします。

長いけど、ノンストップで読みきりました。
丁寧で、波がないので、読みやすかったです。



新世界より 上

新世界より 上

  • 作者: 貴志 祐介
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/01/24
  • メディア: 単行本



それにしても、
酒もタバコも博打も麻薬もない世界って、どんなもんだろう?
そもそも実現可能なんだろうか?
どうもピンとこないあたりが、どうにも作り物っぽいなあ、と感じちゃうところ。

そんなものに頼らなくっても、
快楽のありようが違うっていうんなら、
そのへんの表現があったら、もっと面白かったのに。

なんにも悪いもののないクリーンな社会では、
たとえば、綿アメの砂糖でトリップしちゃったり、なんてことも
あるかもしれない。
スパイスジャンキーや、シュガーハイが横行する夏まつり。
私たちの想像する夏まつりより、
ずっとアヤしい影の横行する夜になってたり。

そんなものはない、
欲を抑える教育体制を組織の中心にした国家だから、
みんないつでもクリーンなのだ、と
言えばオシマイなのかもしれないけれど。
でも、
集団がある以上、出世欲はなくならないだろうし、
知識欲をなくすこと、
所有欲をなくすることも難しいと思うんですが。
どうなんでしょうねえ。

そもそも、
欲を消すこと、
快楽を消すのは危険なことだと思うんです。
生物である以上、
快楽を求めてしまうのは、当然のことでしょうし、
結局のところ、快楽の伴わない「思いやり」はないので、
それをなくしたら、円滑な集団活動は形成しえないと思うんですが。

まあ、いいか。

とりあえず、私がこの世界を仕切るなら、
まず、「結婚」や「持ち家」などの個人所有に関する意識変革は
作りたいな。
そして、プライバシー意識を作らない教育を考えます。
子供のときから教育したら、人前で排泄をするのも平気になれる。
一人で考える時間を与えなければ、
管理はやりやすいはず。

SF的に未来を想像するとき。
結局、フリーセックスか、セックスレスか、どっちかの世界になるような気がします。
個人的意見ですけど。

その点、本書「新世界より」は、
いろいろ半端でオシイ感じがしちゃいました。

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