大地 [名作古典]

タイトル    大地
作者     パールバック


(あらすじとデータ)

舞台は中国。
働き者の貧しい農夫が農地を買い広げ、金持ちになる(一部)が、
その息子たちは農地を売り払い、贅沢や銭や権力に変えてしまう(二部)。
しかし、軍人として育てられた三男の一人息子は、父親に反発し、
かといって革命運動にも心頭しきれず、
農地を耕すことに安らぎを見出す(三部)。

1930年代に出版。ノーベル文学賞受賞作である。

河出書房世界文学全集20 大久保康雄・訳で読みました。


(私はこう読んだ)

大河ドラマとして、普通に面白かったです。
古典だの、名作だの、聞くと敷居が高く感じるけど、
読んだらけっこう普通に面白い作品って多いなあ、って最近思います。
ちょっと長いけど。
厚いけど。
重いけど。

それぞれの世代のサクセスストーリーであり、
それが、あっけなく価値を失ってゆく、
栄枯盛衰の物語であると同時に、
どんどん複雑に多様化してゆく世界のなかの自己の居場所を探す、
さすらいの物語へと加速する
中国で育った欧米人女性であり、
障害児の母親という作者のアイディンティティは、
結局のところ、
価値観のゆらぎを書かずにはいられなかったんだろうな。

というような、ガッコーの読書感想文向きの感想も、
もちろん感じたわけだけど、
それとは別に、人間風景が不思議に美しいのも楽しいところ。

老人の妾だった淋しい面立ちの美女が、
痴呆の老嬢と、せむしの子供と一緒に、
古い農家で暮らす光景とか。
かつての美貌の芸妓が、美食と宝石に囲まれて、でっぷりと太り、
切れ者だけど、手癖の悪い元同僚を随えて、
賭博三昧の日々を送る様とか。
アル中になっても、男振りの良かった武将の世話を続けるミツクチの部下とか。
これでもかと繰り広げられる退廃美に、
悪趣味だけど、うっかり萌えツボ押されたり。

あと、一部のカーチャンが妙に怖いんですけど。
出産のあたりとか、マジこえーっす。
身体の丈夫さとかもだけど、情のコワさに泣きそう。
丈夫で便利な嫁だ、くらいにしか感じない、男衆の感性の低さが、
変にリアルでこえーなー、と思ったのは私だけでしょうか。

もしくは、
生命力が強くて、あんまり他人に興味ない感じが、
中国っぽいな、とか。

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